ワインの話~その1
ちょっと今回は趣向を変えて、ワインの話をしようと思う。ワイン漫画では「神の雫」が有名だが、それよりもだいぶ前にヒッソリとオールマンに連載されていた「ソムリエ」という漫画がある。作品自体の質はそれほど高いとは言えないが、俺はこの漫画が好きだった。何故かというと、ワインの中では邪道とも思われているドイツワインについて、この作者はかなりの力を入れて描いていたからだ。そう、俺はドイツワインが好きなのだ。
時は1990年代。世の中はバブルの余韻とも言える華やかさと寂しさが綯い交ぜになったような独特の空気に満ちていた。バブル経済は日本に色々なものをもたらしたが、俺が個人的に一番良かったと思うのは、グルメブームの到来である。玉石混淆では有ったが、フランス料理やイタリア料理の店が沢山オープンし、女の子とデートするときには、気合を入れてそういう店に連れて行くのが、当時の男たちの典型的なパターンだった。学生の頃からチューハイしか飲んでいなかった俺だったが、さすがにそういう店では食事に合わせてワインを注文していた。分かったような顔をしてワイングラスを傾けてはいたが、俺はワインがちっとも美味しいと思えなかった。そんな中、俺の考えを変えさせるワインに出会ったのである。
確かどこかのリゾートホテルに泊まった時だったと思う。客をビビらせる為にあるんじゃないかと思わせるような、分厚いワインリストを差し出され、途方に暮れた俺は仕方なく、次のようにオーダーした。
「ワイン初心者にも飲みやすいような、魚介に良く合うワインをお願いします。」
慇懃なソムリエがチョイスしたのが俺が初めて出会ったドイツワイン、「ピースポーター」であった。そのワインは甘口のワインでごく端的に言えば「超高級なぶどうジュース」という感じ。フレッシュな酸味やミネラル感も十分に有り、甘口にもかかわらず、確かに料理に良く合った。それまでフランス産のワインしか知らなかった俺には衝撃的な味だった。俺は一発でドイツワインというものが気に入った。
さて東京に帰ってきてからも、俺は食事のたびにドイツワインを注文した。マリアージュなど考えず、ステーキハウスで肉料理を食べるときや多国籍風居酒屋などでも、バカの一つ覚えのうように注文していたので、当時、俺と一緒に食事を取った人は結構迷惑だったかも知れない。ピースポーター以外にもカッツ、ブルーナン、ブラックタワー、マドンナなど比較的低価格のドイツワインは殆ど試してみた。しかし、何というか・・・美味しくないのである。どれも皆、ただ甘いだけのワインなのである。同じピースポーターという銘柄のワインでさえ、東京では全く違う味がした。
ワイン好きの人は、ドイツワインを嫌っている人が多い。曰く「あんなのワインじゃねー」。そう、俺も、最初に飲んだピースポーター以外については、そう言われても仕方がない味だと思えた。また当時ドイツワインは店頭での入手が難しく、フランスやイタリア産ワインの大きな陳列スペースに追いやられて、それこそマドンナやカッツなど千円以下の激安ワインだけを細々としか置いていない店が殆どだった。
・・・あのワインはなんだったんだろう。旅行に出かけて浮かれていたせいで、美味しく感じただけだったのだろうか?いや、そんな筈はない。絶対にあの時飲んだワインは美味しかった。
そして俺は自分の記憶を確かめるため、渋谷にあるドイツワインの在庫は日本一という噂のドイツ料理専門店に行ったのだった。・・・(つづく)














































































































































































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